あなたを紹介できない理由 ―この恋は、規則違反です―
「私、結婚できるんでしょうか。」

気がつけば、そんな本音を口にしていた。

東条さんの優しい笑顔に、つい気持ちが緩んだのかもしれない。

「もう35歳ですし。私を恋愛対象として見てくれる方、いるんでしょうか。」

自嘲気味に笑いながら言ったつもりだった。けれど、その言葉には確かな不安が滲んでいた。

すると東条さんは、間髪入れずに答えた。


「安心してください。プロフィールを見た限り、浅野さんは決して現実離れしたお相手を求めているわけではありませんよ。」

その言葉に、少し肩の力が抜けた。

プロフィールに書いた条件は、ごくごく普通だったと思う。

年齢も年収も、自分と同じくらいでいい。見た目だって特にこだわりはない。

でも――

（もっと理想を高く持つべきだったのかな……）

そんなことがふと頭をよぎる。

けれど、東条さんの言葉が静かに胸に残っていた。

“現実的”だって、ちゃんと誰かに届くのかもしれない。

そう思えたことが、少しだけ救いだった。
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