世界がラブソングを知ったなら
【密かに夢を抱いていた】
女の子ならきっと、1度はお姫様になりたいと思ったことがあるだろう。

そして、いつか王子様が迎えに来てくれたら…。


なんて。

そんな御伽話のようなことを思ったことだって、きっとある。



それが現実じゃ叶わないと思い知るのは、自分が思っているよりも早い。


「はぁ…。」

「どうしたの、そんな大きなため息ついて。」

「‥、…のんちゃん。」

「ん?」

「私の王子様はどこで迷ってるのかな。」

「…は?」




ポツリと小さく彼女に問うと、その綺麗な顔からは想像できない声が聞こえてくる。




「‥何、寒さで頭ヤられてんの?」

「いたって正常です!」

「全く説得力ないから。」



スマホを弄りながら呆れたような声色で私の言葉を一蹴り。



太陽の光に透けるサラサラのブラウンの髪の毛。

パッチリ二重の目を囲む睫毛は、頬に影を落とすほどに長くて、唇なんてプルプル。


のんちゃんこと、
飯島歌音《いいじま かのん》は、女の子の憧れの的。


いつ見ても、完璧に可愛い。





「ねぇのんちゃん。」

「…白馬の王子様の行方なんて知らないよ。」

「そうじゃなくて!」




もう!と唇を尖らせれば、ちょっと楽しそうに笑った彼女は、綺麗なブラウンの髪の毛をかきあげて風に遊ばせた。


「恋ってどんな感じなの?」

「何、突然。」

「…恥ずかしながら今まで1度もそういう経験がないもので。」

「高校なんて恋愛時期じゃん。なかったの?」

「あんまりピンと来なかったていうか、好きな人が居なかったっていうか…。」



友だちはそれはそれは当たり前のように恋をして、当たり前のように彼氏ができていた。


てっきり私にもできるもんだと思ってたけど、現実はそう甘くなかった。



恋のひとつもせず、彼氏の1人もできず、青春真っ盛りの高校生活は幕を閉じてしまった。




「ふぅん、まぁそういうのもあるよね。」

「理想が高すぎるのかな…。」



彼氏ができないことを友だちから散々に言われて、「翠《すい》は理想が高すぎるんだよ。」と永遠と言われ続けた。



理想なんて高くないはずだ。

私のこと好きで居てくれて大切にしてくれる人だったら、それでいいのに。


それのどこが理想が高いんだ。





「焦んなくていいんじゃない?」

「え?」

「恋はするものじゃなくて、落ちるものなんだから。」



色気が滲んだその微笑みは鳥肌が立つほどに綺麗で、その言葉が妙に胸にストン、と落ちてきた。
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