世界がラブソングを知ったなら
オシャレなカフェがあるとのんちゃんが言うから、帰りに2人でそのお店に寄ることにした。


「わぁ、すごい可愛い…。」

「でしょ?」


アンティークな感じの雰囲気の可愛い店内に、心が躍る。




「ここのケーキセット美味しいからオススメ。」

「ケーキ!大好き!」

「知ってる、だから連れて来た。」



ちょっと得意気に笑ってそう言った彼女は、ピースをして無邪気な笑顔を浮かべた。


‥可愛すぎる。


何それ、ズルい。



綺麗で可愛いって何なの。


その可愛さをちょっとでいいから私にくれないかななんて、そんなバカなことを考えていると。




「ケーキセットもオススメだけど、コーヒーもオススメ。」


ふわっと香ったのは、のんちゃんの香水じゃない。



その香りに誘われるように顔を上げると。





「あ…。」


「うん?」






ブラウンで柔らかい髪の毛。

陶器のように滑らかな肌。

鼻筋がすっと通った高い鼻。

琥珀色の綺麗な瞳。







「‥、いた……。」



白馬には乗っていなかったけど、そこには確かに王子様が居た。


真っ逆さまに堕ちていく感じがした。



「おーい、翠。」

「へ…、あ、はい!」


王子様のようなその人に見惚れていると、名前を呼ばれる。



「コーヒーオススメって言ってるけど、どうするの?」

「あ、コーヒー…。」



私に見つめられていた彼は、唇の端をキュッと上げたそんな笑顔でコテンと首を傾げた。


カッコイイ……。



「翠はコーヒー飲めないもんね。」

「うん、苦いんだもん…。」



せっかくオススメしてくれたのに申し訳ないけれど、私は別の飲み物頼まなきゃ。



こんなことならコーヒーくらい飲めるようになってれば良かったと、内心後悔を募らせていれば。





「甘いの好き?」

「へ?」

「そうだなぁ、例えばココアとか。」

「えっと、好き、です。」



私のその返事を聞いた彼は、「了解。」と人懐っこい笑顔を浮かべて厨房らしきところに入って行った。





「あらあらあら?」

「な、何…?」

「…恋の予感かな?」

「ち、違うよ!」


ちょっと意地悪な顔をした彼女に否定の言葉を返せば、「ほー?」なんて言って全然信じてくれない。




「須藤聖《すどう ひじり》」

「え?」

「あの人の名前。」

「へ……、」



頬杖を突いた彼女から発せられた声は、彼の名前を静かに紡いだ。
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