世界がラブソングを知ったなら
「翠ちゃんコレお願い。」

「はい!」


須藤さんが淹れるコーヒー。



「ゆずちゃん、できたよー。」

「はーい!」



中野さんが淹れるレモンティー。




香りだけで幸せになれる。



私が幸せになるように、飲んだ人たちも幸せになるといいな。




「ふぅ…。」


息を吐いてパンパンと手を叩くと何だかちょっとだけ達成感。


ちょっとずつ仕事も覚えられて、できることも増えてきてすごく楽しい。




「さて、戻ろっと。」



戻ったら中野さんがココア淹れてくれるって言ってくれた。





「もうやばいー!超カッコイイ!!」

「あんなイケメンが2人も居るなんて、最高だわ。」


ココアココア、と少し浮かれながら勝手口のドアノブに手を掛けた時、遠くで聞こえてきた声に思わず足が止まった。




カフェのお客さんかな…?



“イケメンが2人”なんて、この辺だとこのカフェだ。




「聖くんって本当にイケメン!」


あぁ、なるほど。須藤さんファンなのか。



分かる。

見た目も王子様みたいだけど、それ以上にすごく優しくてとっても素敵な人。



その人柄に惹かれるのは当然だ。




「マジで付き合いたいー。」

「あんなイケメンだったら自慢だよねー!」



褒められているのは私じゃないけど、自分のことのように嬉しい。




「でも、性格に難ありそうじゃない?」

「あー、それ分かる。ちょっと面倒くさそう。」




え…。




その言葉を聞いた瞬間、私の中の時間《とき》が止まった。


何、それ…。



思わず声のしている方に目を向けると、そこに居たのは若い女の人2人。




「あの人たち…。」



こっちに向かって歩いてきているその女性2人は、カフェによく来ている人たちだった。






「でも、それでも全然良い。」

「分かる。顔があれだけ良いんだから、性格悪くても目瞑るわ。」




何それ…。



いつもいつも来ているのに。



貴方は一体須藤さんの何を見てるの___?





「いや、あの顔で性格まで良かったら逆に怖いから。」

「好きなくせに、辛辣ー。」




ケラケラと笑うその声に、ものすごい不快感を覚えてしまう。



――――外見しか見てないくせに、好きだなんて言わないで。





「あの!ちょっといいですか!!」




もう我慢できない。
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