世界がラブソングを知ったなら
*聖side*
≪19歳女子大生が暴行の被害に遭いました。被害に遭った女性は、人通りの少ない道を歩いていたとのことです。女性は……≫
そんな物騒なニュースが流れているのに、1人でこんな夜遅くに帰らせるなんてあまりにも酷な話だ。
中野さんが言わなくても送って行くつもりだったけど、さっきのニュースが怖いのか彼女はさっきからずっと黙ったままだ。
「翠ちゃん?」
「え…、あ…。」
何か耐えるようにギュ…と瞼を閉じた姿を見て、思わず彼女の名前を呼んだ。
「‥どうした?」
「あ、いや…、何でもないんです…。」
「そっか、なら良いんだけど。」
何もないワケはないんだろうけど、人間話したくないことくらい一つや二つある。
―――だから、今回は君のついた小さな嘘に騙されたフリをしておくよ。
「へ……。」
「‥ゆっくり深呼吸してみようか。」
華奢な体がもっと小さくなって怯えている彼女の背中をさすってあげると、強張っていた体からふっと力が抜けた。
「やっぱりさ。」
「へ?」
「俺が淹れたココアで喜んでくれるの翠ちゃんだけ。」
「え、そんなことないですよ、絶対ウソ…。」
今俺にできることは、彼女の頭の中を支配しているであろう嫌なことから意識を逸らしてあげることくらい。
「ホントだって。あんな嬉しそうに待ってくれた子初めて会った。」
「いやいや…!それ絶対須藤さんが気付いてないだけですから…!」
こんな話で、君が少しでも楽になるのならいくらでもするからさ。
「そうかなぁ。」
「‥須藤さんって意外と鈍感なんですね。」
ふにゃん、と緩く下がった目尻。
いつもの柔らかい笑顔が、彼女に咲く。
「‥やっと笑った。」
「え?」
「ううん、帰ろうか。」
「須藤さん?」
―――歯車が回り始めていたことを、この時の俺はまだ知らない。
≪19歳女子大生が暴行の被害に遭いました。被害に遭った女性は、人通りの少ない道を歩いていたとのことです。女性は……≫
そんな物騒なニュースが流れているのに、1人でこんな夜遅くに帰らせるなんてあまりにも酷な話だ。
中野さんが言わなくても送って行くつもりだったけど、さっきのニュースが怖いのか彼女はさっきからずっと黙ったままだ。
「翠ちゃん?」
「え…、あ…。」
何か耐えるようにギュ…と瞼を閉じた姿を見て、思わず彼女の名前を呼んだ。
「‥どうした?」
「あ、いや…、何でもないんです…。」
「そっか、なら良いんだけど。」
何もないワケはないんだろうけど、人間話したくないことくらい一つや二つある。
―――だから、今回は君のついた小さな嘘に騙されたフリをしておくよ。
「へ……。」
「‥ゆっくり深呼吸してみようか。」
華奢な体がもっと小さくなって怯えている彼女の背中をさすってあげると、強張っていた体からふっと力が抜けた。
「やっぱりさ。」
「へ?」
「俺が淹れたココアで喜んでくれるの翠ちゃんだけ。」
「え、そんなことないですよ、絶対ウソ…。」
今俺にできることは、彼女の頭の中を支配しているであろう嫌なことから意識を逸らしてあげることくらい。
「ホントだって。あんな嬉しそうに待ってくれた子初めて会った。」
「いやいや…!それ絶対須藤さんが気付いてないだけですから…!」
こんな話で、君が少しでも楽になるのならいくらでもするからさ。
「そうかなぁ。」
「‥須藤さんって意外と鈍感なんですね。」
ふにゃん、と緩く下がった目尻。
いつもの柔らかい笑顔が、彼女に咲く。
「‥やっと笑った。」
「え?」
「ううん、帰ろうか。」
「須藤さん?」
―――歯車が回り始めていたことを、この時の俺はまだ知らない。