世界がラブソングを知ったなら
ふわふわと木漏れ日のように柔らかい笑顔を浮かべる彼は、聞けばこのお店の店長さんらしい。
名前は、中野凌《なかの りょう》というらしい。
エプロンに付いてるネームプレートに手書きで、"なかの"とひらがなで書かれてあった。
ひらがな表記が似合ってるなと、そんなことを考えていると。
――――あの日、鼻腔を擽った香り。
その匂いに、はっと顔をあげると。
「お待たせしました。」
王子様が、そこにいた。
「え……、」
「ん?どうかした?」
さっきまで居なかった彼がココアを私の前に置いて、小首を傾げてそう私に問う。
目にかかった前髪を指先で払う仕草さえ様になっていて、目が眩みそうだ。
「須藤さん…。」
「あ、覚えててくれた。」
キュッ…と片唇を上げたその意地悪な笑顔で、そう言って。
「翠ちゃん、だったよね?」
「へ……、」
私の名前を、彼の唇が紡いだ。
「何だ、聖の知り合いかー。」
「違うよ、昨日来てくれたお客さん。」
名前を覚えられていたという衝撃の事実に、空いた口が塞がらない。
「じゃあ俺はフルネーム教えて貰おうっと。」
「え?」
八重歯を覗かせて柔らかい笑みを浮かべた中野さんが、フルネームが知りたいと言い出した。
「はい、お名前は?」
「え、っと…、楪翠《ゆずりは すい》です。」
自分の名前を震える声で告げれば、それに反応したのは名前を聞いた彼ではなく。
「楪 翠ちゃん?」
「は、はい。」
須藤さんが私の名前を呼んだ。
それだけなのにとびきり嬉しくて、何の変哲もない自分の名前が、突然キラキラと輝きを放った気がした。
「何で聖が聞いてんだよー。」
「隣にいるんだから、聞こえるに決まってんじゃん。」
私のフルネームを須藤さんが知ったという事実に、少し納得がいかない様子の彼は、つまらなそうに唇を尖らせた。
そのやり取りが何だか可愛くて、思わず笑ってしまった。
名前は、中野凌《なかの りょう》というらしい。
エプロンに付いてるネームプレートに手書きで、"なかの"とひらがなで書かれてあった。
ひらがな表記が似合ってるなと、そんなことを考えていると。
――――あの日、鼻腔を擽った香り。
その匂いに、はっと顔をあげると。
「お待たせしました。」
王子様が、そこにいた。
「え……、」
「ん?どうかした?」
さっきまで居なかった彼がココアを私の前に置いて、小首を傾げてそう私に問う。
目にかかった前髪を指先で払う仕草さえ様になっていて、目が眩みそうだ。
「須藤さん…。」
「あ、覚えててくれた。」
キュッ…と片唇を上げたその意地悪な笑顔で、そう言って。
「翠ちゃん、だったよね?」
「へ……、」
私の名前を、彼の唇が紡いだ。
「何だ、聖の知り合いかー。」
「違うよ、昨日来てくれたお客さん。」
名前を覚えられていたという衝撃の事実に、空いた口が塞がらない。
「じゃあ俺はフルネーム教えて貰おうっと。」
「え?」
八重歯を覗かせて柔らかい笑みを浮かべた中野さんが、フルネームが知りたいと言い出した。
「はい、お名前は?」
「え、っと…、楪翠《ゆずりは すい》です。」
自分の名前を震える声で告げれば、それに反応したのは名前を聞いた彼ではなく。
「楪 翠ちゃん?」
「は、はい。」
須藤さんが私の名前を呼んだ。
それだけなのにとびきり嬉しくて、何の変哲もない自分の名前が、突然キラキラと輝きを放った気がした。
「何で聖が聞いてんだよー。」
「隣にいるんだから、聞こえるに決まってんじゃん。」
私のフルネームを須藤さんが知ったという事実に、少し納得がいかない様子の彼は、つまらなそうに唇を尖らせた。
そのやり取りが何だか可愛くて、思わず笑ってしまった。