世界がラブソングを知ったなら
「のんちゃん、頑張ってね!」

「うん、ありがとう。」

「写真見るの楽しみだなぁ。」



そう言うと「ありがとう」と言った彼女は、少し照れたような笑顔を浮かべた。



……可愛い。



知り合いのお店のサロンモデルをしているのんちゃんは、時々こうやって撮影がある。



その度に私は、その写真を(半ば無理矢理)見せてもらっているのだけど、これは贔屓目でも何でもなく、モデルさんに負けないくらいのレベル。


スカウトも時々受けているみたいだけど、彼女曰く「これを仕事にする気はない。」らしい。





「じゃあまた明日ね。」

「うん、がんばってねー。」



ばいばい、と手を振って彼女と別れる。






「今日は何しよっかな…。」



いつものんちゃんと帰っている道を、今日は一人で歩く。



のんちゃんが撮影の時は一人で帰ることもあるから、それは全然いいんだけれども。




ただ、暇を持て余してしまう。



「‥、…あ。」


ブラブラと当てもなく歩いていると、顔を上げた先にあったそれに思わず足が止まった。



「王子様…。」




昨日行ったお店の前で思わず呟いてしまった言葉に、はっと口を噤んだ。



こんな道端で何言ってんだ私…!




じっと扉を見つめていると、漂ってきた甘い香りに思わず足がそっちに向いてしまって。




「いらっしゃいー。」



気づいたら扉を開けてしまっていた。




そう声を掛けてくれたのは、王子様じゃなくて別の男の人だった。





「あ、こ、こんにちは…。」




柔らかい笑顔を浮かべた男の人も、王子様に負けないくらいすごく綺麗な顔をしていた。





「ひとり?」

「あ、はい。」

「んー、じゃあここ座んなよ。」



そう言って勧められたのは、カウンター席。



1人だからむしろカウンターの方が良い気がして、勧められた席に腰を下ろした。



「何にするー?」

「えっと、何にしよっかな…。」


メニューを眺めてみると、色々あって悩んでしまう。



「あ…、」




メニューの文字を目で追っていると、ココア、のその文字に目が止まって。




「ココア、ください。」





コーヒーが飲めないと言った私に、王子様が出してくれたそれを気づけば頼んでいた。
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