家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「伯爵と結婚するしか、道は残されていないのですね……」

私はかすれた声でそう言った。力なく、けれど確かに。

父は書類に目を落としたまま、事務的に返す。

「断っても、これ以上の相手は出てこない。」

胸の奥がきしむように痛んだ。

言葉を失っていると、母が口を開いた。

「いいじゃない。お金を持っている人と結婚するのが、そんなに嫌なの?」

柔らかな声だった。

けれど、私にはその響きが冷たく感じられた。

「そういうわけでは……」と答えると、母は微笑んで言った。

「お父様も私も、クラリスの幸せを祈っているのよ。心からね。」

祈っている――その言葉が、虚しく響く。

私の気持ちも、希望も、すべて置き去りにされたまま。

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