家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「どうして羨ましいの?」

無邪気な声で尋ねるルシアに、私は答えられなかった。

視線をそらし、ただ足元の絨毯を見つめる。

「ねえ、お姉様。何かあったなら言って。私たちの仲じゃない。」

ルシアはそう言って、私の手をそっと取った。

柔らかくて、温かい手だった。

昔からそうだった。
甘え上手で、人に愛される術を自然と知っている子。

「……何もないわ。」

言いかけた言葉を飲み込んで、私は微笑んだふりをした。

本当は言いたかった。

羨ましいの。

あなたのように、美しく生まれたかった。

断られることのない未来が、最初から用意されていることが、どれほど幸福か。

でも——私は姉。

涙も弱音も、見せてはいけない立場だった。
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