家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
そして私とセドリックが、会場の隅をゆっくりと歩き始めた頃だった。

ふと奥の方から、鋭い視線を感じた。

——ルシアだった。

妹は、まっすぐ私たちに向かって歩いてきた。

歩みはゆっくりだが、その目は私たちを射抜くように真剣だった。

「ルシア。」

私は思わずその名を呼ぶ。するとルシアはセドリックの前で立ち止まり、小さくお辞儀をした。

「グレイバーン伯爵。……お兄様と、お呼びしてもよろしいでしょうか?」

少しだけ戸惑ったように、けれど穏やかにセドリックが答えた。

「どうぞ。」

人々の視線が集まる中で、ルシアは礼儀正しく、丁寧に挨拶をした。

あの傲慢な態度は消えていた。

まるで別人のように、彼女は……一歩、距離を詰めてきた。





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