家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
セドリックも口を開けたまま、何も言えずにいた。やがて彼は深く息を吐くと、静かに答えた。

「……少し、考えさせてください。」

それを聞いて、お父様はしばらく黙っていたが、やがて静かに立ち上がった。

「そうか。すまんな。急かすつもりはなかった。時間を置こう。」

そう言うと、彼は重々しく鍵を開け、扉を開いた。

その背中に、かつての威厳はなかった。

そして私は、自分がかつてその名に誇りを持っていた家の変わりように、胸が苦しくなるのを感じていた。

屋敷に戻った私は、ドレスの裾を乱しながらセドリックのもとへ駆け寄った。

「ごめんなさい、セドリック。私……迷惑をかけて。」

思わず頭を下げると、セドリックはすぐに私の肩に手を添え、そっと顔を覗き込んだ。
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