家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
するとその時、傍に控えていた皇太子殿下が一歩前に出て、堂々と進言した。

「父上、いかがでしょう。近頃のグレイバーン伯爵の功績を考えれば、しかるべき地位へ昇進させるべきでは。」

場が静まり返り、私は思わず息をのんだ。

セドリックも驚いた様子で、皇太子殿下を見つめている。

「そうだな……考えておこう。」

国王は場の空気を乱さぬよう、あくまで慎重な様子で答えた。

だがその表情はどこか含みを持ち、やがて近くまで来て、そっとセドリックに耳打ちした。

「昇進の件は、あとでゆっくり話そう。」

その瞬間、私は胸が熱くなり、隣のセドリックの腕を思わず掴んだ。

彼は少し驚いたように私を見てから、静かに微笑んだ。

――努力が報われた瞬間。

私は誰よりもこの人を誇りに思っていた。
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