家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
その夜、私は暖炉の前でため息ばかりついていた。

「どうした、クラリス。」

セドリックがワインのグラスを置きながら声をかけてくる。

「それがね、お父様が来たの。」

私は眉をひそめたまま答えた。

「今度は父親か!」

セドリックも呆れたようにため息をついた。

「お母様に慰謝料を請求されてて……それで、屋敷を売るとか言い出してるの。」

「エルバリー家の屋敷を?」

セドリックは驚いた様子で私を見つめた。

「うん。あの家がなくなるなんて、想像したこともなかった。」

私は思わず、膝の上の手を強く握る。

どんな形であれ、あの家は私の原点だった。

失われるのは、何か大事な一部を失うようで……切なかった。

「クラリス。」セドリックがそっと私の隣に腰を下ろし、肩を抱く。
< 284 / 300 >

この作品をシェア

pagetop