家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「悲しいな……」私はセドリックの胸にすがった。

「お願い、セドリック。屋敷を、何とかできないかしら。」

自分でも、馬鹿なお願いだと分かっていた。

父の失態、母の怒り、すべてはエルバリー家が招いた当然の結果。

「分かってるの。これは、自業自得だってことも……」

でも、どうしても割り切れなかった。

「でもね、セドリック。屋敷を失うなんて……まるで、子供だった頃の私まで失うみたいなの。」

セドリックは黙って、私の背を優しく撫でた。

「君がどれほど、あの家に思い出を残しているか分かるよ。君の言葉ひとつひとつに、それが滲んでる。」

私は目を閉じ、過去の自分と会話するようにうつむいた。

あの広間、あの庭、姉妹で遊んだ小さな池。

そこには幸せな記憶も確かにあった。
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