家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
最後に家族と面会をしたとき、母はすでに目を赤くしていた。

「クラリス……貴族の夫人としての心構えは、全てあなたに教えたつもりです。」

「はい。」私は静かに頷く。

「誇り高く生きなさい。」

母の手が私の頬に添えられ、その温もりに、私は幼い頃の記憶を重ねた。

私が何度も縁談を断られてきたことを、母は誰よりも気にかけてくれていた。

だからこそ、今も心配で仕方がないのだろう。

「クラリス、こんなことを言うのはなんだけど……」

母は私をそっと父から離し、少し陰になった場所へ導いた。

「結婚は……時に孤独なものよ。でも、あなたは誰よりも強くて優しい娘。だから、どんな屋敷に嫁いでもきっと愛されるわ。」

母の声は震えていた。私はその手を握り返した。

「ありがとう、お母様。」

抱きしめられた腕の中で、私は決して泣かないと決めていた。

それでも、こみ上げる想いは止められなかった。
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