家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
そして父は、私の前に立ち、しっかりと私の手を握った。

その手は大きく、硬く、どこか不器用な温もりを宿していた。

「セドリックは成り上がりと言われるほど、仕事に邁進している男だ。余計なことはするな。何もでしゃばるなよ。」

重く低い声で言われたその言葉に、私は静かに頷いた。

「はい。」

――安心して。私はセドリックに興味なんてない。

そう思った私は、その瞬間だけ妙に冷静だった。

「あと、金の面倒もでしゃばるなよ。いいか、女は男に従うものだ。何でもセドリックの言う通りにするんだ。」

父は視線を逸らさず、厳しい口調で言い切った。

それが父なりの“愛情”なのだと、私は分かっていた。

けれど、心の奥ではどこか違和感がくすぶっていた。

私はただ、口を噤んで「はい。」と繰り返すことしかできなかった。
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