家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
夜風が肌寒く感じられる頃、ようやく馬車はグレイバーン伯爵の屋敷に到着した。

広大な門が開かれ、立派な建物の灯りが私たちを迎えるように瞬いていた。

「やっと着いたね。」

セドリック様が馬車から降りると、私に微笑みながらそう言った。

「申し訳ございません。出発が遅れてしまって……」

深く頭を下げた私に、セドリック様は軽く首を振った。

「まあまあ、家族との別れは大事な時間だからね。」

そう言って、私をかばってくれたのは、彼の母上だった。ふわりとした笑顔をたたえた上品な女性で、どこか私の母に似ている雰囲気を感じた。

「ようこそ、グレイバーン伯爵家へ。クラリスさん、あなたが来るのを楽しみにしていましたよ。」

その柔らかな声に、私の張り詰めていた心が、少しだけほどけた気がした。

――優しそうな母親でよかった。

私はそう胸の内でつぶやいた。これから始まる新しい生活に、不安の中にもわずかな安心が芽生えていた。
< 42 / 300 >

この作品をシェア

pagetop