家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
セドリックに視線を向けると、彼はすぐに私に気づき、微笑みながら手を差し伸べてきた。

「こちらへどうぞ、クラリス。」

そのまま私を家の中へと優しく誘導してくれる。

さらに、荷物を運ぶ使用人たちに細やかな指示を出してくれていた。

動きに無駄がなく、彼の人柄と能力の高さが自然と伝わってくる。

――本当に、完璧な人。

扉をくぐったところで、私は小さな声で話しかけた。

「ありがとう、出迎えてくれて。」

彼は一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、すぐに柔らかく笑って答えてくれた。

「当たり前だ。僕の妻だからね。」

その言葉に、胸が少しだけ熱くなる。

政略結婚だとしても、彼はこうして私を“妻”として扱ってくれている。

その誠実さに、救われた気がした。

私は黙って小さく頷き、彼の横を歩いて屋敷の中へと足を踏み入れた。新しい生活の始まりだった。
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