家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
そして──私には、密かに想いを寄せていた人がいた。

アドリアン・セレスト・ヴァレンティウス。

名門ヴァレンティウス公爵家の御曹司。

私たちは幼いころから顔を合わせてきた。家同士も古くから親交があり、年齢も近い。

だから、いつか自然と彼の隣に立てる日が来ると信じていた。

私は、アドリアンと結婚するものだと思っていた。

それはきっと、私にとっての初恋だった。


彼の柔らかい金の髪と、涼しげな灰色の瞳。

立ち居振る舞いは完璧で、いつでも人に優しく、でもどこか近寄りがたい。

そんな彼が、私にだけふと笑ってくれたことがあった。

些細な仕草や声が、今も胸に残っている。

だけど――私の”そばかす”が、彼と私の距離を、いつの間にか決定的に引き離していたのだと、あとになって知った。

彼が私に近づかなくなったのは、私の中身のせいじゃなかった。

私の「顔」のせいだったのだ。
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