家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「セドリック、おめでとう。」

彼女の声は震えていた。

目元にはうっすらと涙が浮かんでいて、その表情には込み上げる想いが滲んでいた。

――そんなに、セドリックと親しいの?

その疑問が胸に引っかかり、私は自然と二人のもとへ足を向けていた。

まるで無意識に引き寄せられるように。

「はじめまして。」

声をかけると、彼女はわずかに顔を上げ、形式的に頭を下げた。

「セドリックの幼馴染みなんですってね。来てくれてありがとう。」

私がそう言うと、彼女は小さく首を振った。

「いいえ……」

その一言のあと、彼女は視線を落とし、再び黙ってしまった。

どこかぎこちない態度に、私はますます気になってしまう。

――私の前では、あまり話したくないのだろうか。
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