家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
それとも……何か、言えない理由でもあるの?

セドリックの横顔を盗み見ると、彼は穏やかな笑みを浮かべていたが、何かを隠しているようにも見えた。

私の胸の奥に、言いようのないざわめきが広がっていくのを感じた。

その時、セドリックは別の同級生に声をかけられ、軽く私たちに会釈をして席を外した。

「行ってしまったわね。」

私がぽつりと言うと、彼女も小さく頷いた。

「ええ。」

彼女はそのまま立ち去ろうとしたが、なぜか私はその背に声をかけていた。

――理性よりも先に、心が動いた。

「あなた……結婚は?」

彼女は少しだけ振り返った。

「していません。」

「そう。見たところ、育ちの良さそうなご令嬢に見えるけれど……」

それは率直な印象だった。

着こなしも所作も洗練されていて、明らかに平民とは違う。
< 53 / 300 >

この作品をシェア

pagetop