家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
彼女のその言葉に、胸が締めつけられる。

貴族に生まれなかったがゆえに、彼と共に歩むことができなかった――彼女の想いが痛いほど伝わってくる。

そのまま彼女は、何も言わず、振り返りもせずに静かに去っていった。

私は立ち尽くしたまま、心の中に重たいものが落ちていくのを感じた。

貴族と貴族の結婚――それは形式的なことかもしれない。

でも、伯爵家なら平民の娘と結婚したって、決して許されないわけではない。

それでも、彼は私を選んだ。家柄を、名誉を、将来を見据えて。

――私は、彼女の幸せを奪ってしまったのだ。

彼女が伯爵夫人になる機会を……そして、きっと本当の愛を。
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