アルト、猫になる【アルトレコード】
「ほら、いこ。果報は寝て待てって言うだろ」
 元気なアルトが手を出すから、私は猫になったアルトをそっと渡す。猫のアルトは彼のパーカーのひもにじゃれかけて、はっとしたようにやめた。

「先生、おみやげはまたあとで渡しにくるなっ。みんなで選んだんだ」
 アルトが猫のアルトを抱えてそう言った。

「別に、俺はなにもしてないけどな」
「ふっ、一番熱心に選んでいたのを見たが」
「……っるせ!」
「ありがとね、みんな」
 私がお礼を言うと、
「任せてくれよな」
「……ああ」
「先生がひとりで抱え込む必要はないんだ」
 アルトたちからは明るい返事が返ってきた。



 それからさらに一か月後。
 ようやくアルトの義体が修理から返って来て、北斗さんが猫の義体からアルトの義体へと移し替えてくれた。

 目をぱちっと開けたアルトは、うーん、と伸びをしてから起き上がる。

「やっぱりこの方がいい! 先生、北斗、ありがと! 大好き!」
 起き上がってすぐ、アルトは私に抱き着いてくる。
 私はアルトの頭をよしよしと撫でた。

「アルトはいつまでも甘えん坊だねえ」
 北斗さんは『作業をしたのはほとんど俺なんだけど』と言いたげな目でアルトを見ている。

「いいの。だってぼくはかわいいんだから」
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