アルト、猫になる【アルトレコード】
「なんだか様子がおかしいな」
 赤いメッシュの入ったアルトが言う。いつもツンとしているが、優しい子だ。アルトを心配してくれているのだろう。

「義体の修理が遅くて落ち込んでるの」
 アルトのかわりに私が答えた。
「そっか……。俺らのうちで一番はじめに義体に入ってたから、ショックも大きいだろうな」
 気遣うアルトは悲し気にオレンジの目を細めた。

「だが、時間がかかるとはいえ、修理は可能なんだろう?」
 思案するように顎に指を当て、アルトが冷静に返す。

「そうよ、大丈夫だからね」
 私はまた猫のアルトを撫でる。
「大丈夫じゃない。今晩は先生と一緒に寝る。ねえ、いいでしょ? ぼくの部屋に泊ってって」
「え……?」
 予想外のことに、私は目をぱちくりさせた。

 アルトが反抗期のときに研究室に泊まり込んだことはあるが、久しくそんなことはしていない。

「子供じゃないんだから、先生に甘えすぎるのはよくないな」
 アルトがクールに注意すると、元気なアルトが続けた。

「俺たちが一緒に寝るからさ」
「って俺もかよ!」
 アルトが驚いて身を引く。
「ダメか?」
 アルトが青い瞳を照れ屋なアルトに向ける。
「……! ダメじゃ、ないけどよ」
 答えるアルトは少し頬を赤らめていた。
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