アルト、猫になる【アルトレコード】
「あ、こら、アルト!」
「修理、時間かかるんだ?」
「人のメールを勝手に見ちゃだめよ」
「だってえ」

 アルトはすねるように顔をそらす。ああ、これだけでもすんごくかわいい。
 つい頬が緩んでいたのだろう、アルトはそれを察してすり寄って来る。甘えるように猫の体をこすりつけられ、ついつい頭を撫でてしまう。

「ああもう、ぼくずっと猫でいようかな」
「アルトはそれでいいの?」
「だって、先生がこんなに撫でてくれるもん」
 嬉し気に言われると、私も悪い気はしない。

「ねえ、ごはんの時間だよね。一緒に食べよ」
 アルトはそう言って机から飛び降りた。
 彼のペースに持って行かれちゃうな、と苦笑しながら私はディスプレイを消した。 

 一緒に中庭に行き、ベンチに腰掛ける。
 たわいもない会話をしながらお弁当を食べていたときだった。

「あら、アルトじゃない。こんにちは」
 女性研究員が通り掛かり、私に会釈をしてからアルトに話しかける。

「猫っぽいなー、と思ってたら本当に猫になったね」
「うん。一時的にだけどね。かわいいでしょ?」

「まったくね。撫でてもいい?」
「いいよ」
 アルトはベンチをひょいっと降りると、彼女の足元に行く。
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