扇情的ナミダ

激情。怒りにも似た感覚。
初めて味わう想いに、俺は狂ってしまった。

『もっと泣かせたい』

手に入れなければ、泣かせて観賞なんて出来ない。

「良いよ、付き合おう。ところで君は誰?」

俺の返事に、驚いた顔。

そうだろうね、俺自身が最低な事を言った自覚がある。
人当たりよく無難に対応してきた自分が、今までと違うのは。

「……わ……て。」

混乱しているのか言葉が詰まって、声が聞こえない。
彼女の目から涙が溢れ、零れ落ちていく。

普通はそうなるよね。
それが見たいと思うなんて。

「忘れて、告白はなかったことに!」

俺の視線に何を感じたのか、方向転換で言い逃げの体勢。

当然、逃がさないけどね。
手を掴んで引き留め、俺はニッコリ笑顔。


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