嫁いだ以上妻の役目は果たしますが、愛さなくて結構です!~なのに鉄壁外科医は溺愛を容赦しない~
「面白いかどうか、じゃなくて、単純に興味があるんです。ほら私、紘生さんについてまだまだ知らないことだらけでしょう?」

 微笑む顔は何度か見ているが、口を開けて笑う姿は見ていないし、慌てた顔や眠そうにする紘生と遭遇したことがない。

 趣味は?
 休日の過ごし方は?
 食べ物の好き嫌いはある?

 普通の夫婦なら知っているであろうことを知らないまま、美七は紘生の妻になった。

「なるほど。言われてみれば、俺も君をよく知っているわけじゃないな」
「五年も婚約者だったのに?」
「月に一度、定期的に会っていたのは最初の一年だけだ。その後は年に一度の帰国時しか会っていない」

 続く話によると、時々メールで近況報告はし合っていたようだが、当たり障りのない内容だったようだ。

「会って話しても、あまり記憶に残らないようなとりとめのない話ばかりだったな。それに、今と違って君は物静かで、口数も少なかった」
「もしかして嫌みを言われてます?」

 あえてにっこりしながら問う。
 すると紘生は喉の奥で小さく笑い、心地よい弾力の肘掛けに肘をつき、こめかみに当てた手に頭を預ける。

「いいや? 言っただろ? 前よりいいと。今の君との会話は以前よりずっと楽しい」

 美七を見つめて微笑するその余裕たっぷりの表情は、男の魅力をふんだんに放っており、不覚にも胸が高鳴った。
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