一番星は君ひとりだけ

20分ほど待っていると、やや大きめのボストンバッグとリュックサック姿でやって来た。


「ん」


ボストンバッグを持とうと手を差し出す。だけどなかなか渡してこない。


「重いでしょ?」

「…」


半ば強引に持つと、才菜ちゃんの手に触れる。


「んっ…」


手に少し触れただけで、気絶しそうな才菜ちゃん。

アイドル冥利に尽きますなぁ。

それと同時に、ただ1人の人間として、彼女に想いを寄せてる以上、喜ばざるを得ない。


「じゃあまた才菜ちゃんと来ます」

「才菜、またね!」

「…はい」


タクシーを呼んで、また自宅に戻る。


「何持って来たの?」

「服とか…色々」


色々、がやたら小声だった。

違和感を覚えたけど、まあいいや。

才菜ちゃんがボストンバッグを開けて、服と謎のBluRayを出す。


「何これ?」

「あっ」

「飛貴くんバラエティ集…?こっちは、飛貴くんドラマ集」


才菜ちゃんはしゃがみこんで顔を手で覆ってる。

色々…ってのはそういうことか。


「可愛い。健気に録ってくれてたの?」


小さく頷いた。小動物みたいで可愛すぎる。
つい頭を撫でてしまう。


「本人すぐ横にいるんだから、必要最低限の物にしなくてもいいのに。そんなに好きなんだ?」

「…別に」

「傷付く!」


照れ隠しなのは分かるけど、傷付くって!


< 12 / 26 >

この作品をシェア

pagetop