一番星は君ひとりだけ
「…あの、才菜ちゃんの親御さんって…」
「ああ、全然干渉してこないのよね。半分育児放棄されてたみたいで。お金だけ払ってあと放置って感じ。もしグループホームから完全に抜けるなら、私から伝言しておくわ」
才菜ちゃんの様子が、病気や気質だけのせいじゃないんだろうなと感じた。
「あとは才菜の気持ちの問題だよね。今、急にあなたが言っただけでしょ、連れて帰りたいって。才菜の気持ちはどうなの?」
才菜ちゃんは一言も発さず、下を向いていた。
「大家さんは、得体の知れない俺に才菜ちゃん預けるのいいんですか」
ふとした疑問を投げかけた。
すると小声で、
「あなた本物の明星くんでしょ。分かってるわよ」
と言ってきた。
つい顔が赤くなる。
「いや…その…」
「まあ、言わないから安心しなさい!」
「はい…」
大家さんには秘密を握られた、怖いぞ。
それはそうと、才菜ちゃんは?
「…なんで?」
「なんでとは?」
「私のこと、守りたいって言ったのは、なんで?」
「…一目惚れ。って言ったら?」
「…」
「好きになっちゃったから。一緒にいた日にちなんて関係ないよ。好きなもんは好きなんだよ。1日でも早く、才菜ちゃんに好きって言われたい。笑顔が見たい。守りたい。」
「…」
「だめかな?」
「…アイドルなのに?」
「そうだけど…アイドルだけど…」
「私のこと拾っても、何もいいことないよ」
「なくてもいいよ、ううん、あるよ」
「例えば何がある?」
「好きな子と一緒にいられる」
必死な俺、恥ずかしい…けど。
「一緒に住もう、あの家で」
「…」
また黙りこくってしまった。
「いいよ、分かった」
俺の顔が緩むのが分かった。
「本当?!やったー!」
思わず才菜ちゃんを抱き締める。
彼女は緊張で強ばってしまっている。
「じゃあ、必要最低限の荷物だけ持って、また取りに来ようか」
彼女は頷いた。彼女の表情からは、何故OK出したのかは読み取れない。