アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
「ありがとうございます、お借りします」
 それを持って司会が私たちのところに来てくれた。
「こういうことは今回限りですよ」
「ありがとうございます!」

 私はぺこっと頭を下げ、それから男性にも頭を下げた。
「本当にありがとうございます!」

「お礼を言うのはこちらです。楽しんでいらしてください!」
「はい!」
 私はバッテリー繋げ、アルトをホログラムで投影した。

「え!? 大丈夫なの!?」
 ホログラムになったアルトは驚いてきょろきょろしている。

「うん。沙織ちゃんのお父さんのおかげで大丈夫になったよ。さ、いこっか。歌の練習、たくさんしたもんね!」
「……嬉しい! ありがとう!」
 アルトは男性に頭をさげ、それから私と一緒にステージに上がった。

 緊張していたアルトはちょっと音程をはずしたけど、それでも楽しそうに歌ってイベントを満喫していた。




 イベントを終えて研究室に帰った私たちを待っていたのは、むすっと怒っている北斗さんだった。

 なんで怒ってるんだろう。
 心当たりがなくて、私はどきどきする。
 わざわざ待ち構えているなんて、きっとすごい怒ってるに違いない。

 アルトは研究室に戻った段階でホログラムになっていたから、今もホログラムで部屋にいる。
「君たちねえ」
 怒った口調に、思わず背筋をピンと伸ばす。
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