アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
「なんでしょう」
「目立たないようにって言ったのに、どうしてあんな目立つことしたの」

「え……?」
 コンテストでは賞を獲ることはできなかった。妖精の女の子——沙織ちゃんが優勝していて、アルトは選外だったのに、どうして目立ったなんて言われるんだろう。

「わからないとは言わせないよ」
 そう言って北斗さんはモニターにイベントの映像を出す。
 ネット中継を北斗さんも見ていて、そのときに録画したようだ。

 画面の中では男性がバッテリーを貸してほしいと訴え、会場が善意の声で満たされている。

 ああ、これで目立ったと怒られたのか。
 私はようやく気付いた。アルトが参加できたことに喜び過ぎて、目立ってるなんて思いもしなかった。

「これは、その……」
「先生は悪くないよ!」
 言い訳しようとする私を、アルトの声がさえぎる。

「ぼくがバッテリーを貸したから、だからあの人がぼくたちの分を確保してくれたんだ!」
 そうして、アルトは今日のできごとを報告する。
 ときどき質問をはさみながら、北斗さんはそれを聞いた。

 聞き終えると、北斗さんは首を少しかしげ、左手をこめかみに当ててた。
「……優しいのはいいけど、自重してもらわないと困る」

「人の役に立ちたいって思うのはダメなの?」
 アルトの問いに、北斗さんはため息をついた。

「ダメじゃないよ。アルトは良いことをしたと思う。けど」
 北斗さんは私を見て目を細めた。
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