アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
「君は、わかってるね? 今回の件は改善点も含めてレポートを出すこと」
「はい……」
 実質、求められているのは反省文だ。

 アルトは機密だ。なのに目立つことをしてしまったのだから、これで済ませてもらえるだけありがたい。

「話は終わり? だったらおやつ食べようよ。先生と一緒に北斗のためにお土産買って来たんだよ! ハロウィンのカボチャクッキー!」
「ありがとう、あとでいただくよ」
「ダメ! 今すぐ! せっかくだから北斗も仮装して!」
 アルトの言葉に、北斗さんは苦笑をもらした。

「俺はいいよ」
「ダメだよ、北斗にも猫耳と尻尾をつけてもらうんだ!」

「そんなの持ってないから無理だよ」
「ぼく、預かってる。ほかの研究室の人に、北斗につけてもらってって言われたんだ」
「いつのまに?」
 私が驚いていると、アルトは得意げに笑った。

「ぼくね、昨日のうちにみんなにトリックオアトリートって言ってきたの。そしたらたくさんお菓子を貰ったの。お土産もあるし、だから、三人でハロウィンのお茶会ね!」
「……あれか……」
 私は天を仰いだ。

 昨日、荷物を運べる小型ドローンを貸してと言われたから用意してあげた。なにをするのかと聞いたら、内緒、と言われた。かぼちゃのランタン型のバスケットを載せて遊んでいたから、それで終わりだと思っていた。まさかお菓子をもらってまわってたなんて。猫耳もそのときに渡されたのだろう。あとでみんなにお礼を言ってまわらないと。猫耳以外は。
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