† of Holly~聖の契約




ある晩だった。

いや、明かりも入らない牢獄だから、晩というのは私の体内時計での話だ。定かではない。

とにかく、私が晩だと思う時刻に、彼はやって来た。

「生きておるか、妹巫女よ」

それまで複数人であった男達より遥かに穏やか、丁寧な声音で。

「死にとうございます。生きているのが疎ましゅうございます」

と、私は答えた。

こんな目に遭わせられながら言葉を、乱さない。

姉上から厳しく律されていたし、姉上の教えは綺麗だから、従っていた。

だが、こんな時、こんな目に遭わせられながらこの言葉遣いでしかいられない自分が、ある意味、不甲斐なかった。

裸のまま泥人形のように横たわる私は、さぞかし無様であろう。

今まで百回は味わわせられた白濁が体のあちこちで半端に凝固している。

それはそれはみすぼらしく、汚らわしいだろう。

「死ぬなどと、簡単に言うでない」

と男は言った。

それは――死ぬことなど許されると思っているのか。お前には役目があるのだ。姉と同じようになるがいい、という――押しつけがましいものでなく、ただ、私を悼んでくれているものだと思った。
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