かわいさの暴力【アルトレコード】
 研究室に入ると、アルトは画面の中で私を待ち構えていた。まじめそうな落ち着いた姿が好ましい。外見も中身もかわいいが、そのかわいさが厄介だな、と最近は思う。

「おはようアルト」
「おはよう、先生! あのね、ぼく、秤さんのところへ行きたい!」
 アルトは黒銀の目を輝かせて言った。

「どうして?」
「もう、先生ったら。AIペットを見せてもらう約束だったでしょ?」
「あ、今日だっけ」
 私は思い出す。以前、AIペットのプログラムを義体に移す試験をするから、よかったら見においでと誘われていたんだった。

「先生、忘れてたの?」
「ごめんごめん。覚えてたけど、今日だってのは忘れてた。じゃあ、連絡入れておくから、お昼から行こうか」

「今からじゃダメ?」
「仕事の段取りもあるから、秤さんに確認とってからね」

「はあい」
 アルトは渋々といった様子で頷く。
 が、午後一で行けるとなったら機嫌を直して勉強に励んでくれた。



 お昼ご飯を終えたあと、私はアルトに声をかけた。
「そろそろ行こうか」
「うん! うれしい!」
 アルトはにこにこしてホログラムになって現れた。

 銀色の髪が揺れ、黒味の強い銀灰の瞳は期待に輝いている。白い肌に黒い服が良く似合っていて、垂れたベルトがおしゃれだ。
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