溺愛する身代わり姫を帝国王子は、逃さない。
 第6話


「だめだよ。ルアンは連れて帰る」

 レイカルド様はそう言って、私の小さな頭を自分の胸奥へ押しつけた。

「嫌です。離してくださいっ!」

「そう喚くな。じゃないとその口を塞いでしまうよ?」

「横暴です! こんなの!」

 レイカルド様に低い声音で威圧されても、私は声を荒げて言い募る。

 どうにか逃れようと、私は自分の両手を立てて抗うが、レイカルド様によって見事に動きは封じこめられてしまう。

「横暴でけっこう。気に入った以上は、どう言われても、ルアンを手放すつもりなんて、僕にはないからね」

「き、気安く名前を呼ばないでください! もう、はなしてください!」

「諦めろ」

 ばっさりと一喝したレイカルド様は、私を自分と一緒にそのまま起きあがらせた。

 「だから、嫌だって! 私から離れてください!」

 それでも文句を言い募る私に、レイカルド様はやれやれと嘆息をついた。

「本当、失礼な娘ですね」

「そうだね」

「我が君、あの、今思ったことではあるのですが」

「何?」

「本日は小娘からははなれ、いったん引きあげたらいかがでしょうか?」

「どうして?」

 ハレット様提案に対し、レイカルド様は顔を顰めてしまう。

「巫女ならば、離宮へそれなりの手続きをしなければいけないのでは?」

「それは、些細な問題だよ」

「そんなことありません。あとで迎えに行けばいいことなのでは?」

「今このまま僕がルアンをお持ち帰りしても、平気だと思うけど?」

 神妙なハレット様の言葉だが、レイカルド様は気にすることなく淡々と言う。

「確かにそうですが」

「だろう?」

「ですが、今回のレイカルド様の発作の情報が耳に入っているだろうオウル様に、すぐにでも連絡をいれないといけないのではないのですか?」

「ああ、そうか」

 ハレット様に言われて、我に返ったのか。

 レイカルド様は、私を拘束していた腕をあっさりと解いた。

 すぐさま私は、レイカルド様から慌ててはなれる。

 扉の近くにはハレット様が控えていたので、反対側の部屋の隅へ、私大慌てで逃げ込んだ。

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