執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
何も言えずただ立ち尽くすしかできないでいる雫を見て、彼女は溜飲を下げたのだろう。
綺麗な髪を靡かせながら、雫に背を向けた。
玄関を出たあと、ドアを閉める前に雫へと再度忠告をしてくる。
「貴女が良識人であることを願うわ。永江さんのためを思うなら、自分の父親を彼に近づけたくなければ……わかるわよね? 井熊さん」
それだけ言うと、真亜子は出て行った。
パタンとドアが閉まる音がして、ようやく呪縛が解けたように雫はその場に崩れ落ちる。
頭の中が色々な感情で混乱していて、落ち着いてくれない。
床の冷たい感触が伝わってきて、のそのそと身体を動かす。
雫がここにやって来たのは、幹太が心配だったからだ。
後悔するのは、幹太が元気になってからでいい。まずは、彼の看病をするのが先決だ。
すぐさま寝室へと向かい、ゆっくりと扉を開く。
薄暗くしてある部屋の奥、ダブルベッドで幹太が眠っていた。
彼を起こさないように細心の注意を払いながら、室内へと入っていく。
かけてある布団が微かに上下に揺れている。水埜が言っていた通りで、薬が効いているのだろう。ぐっすりと眠っているようだ。