先生、手をつないで【アルトレコード】
「ぼくが喜ぶもの……あ、ポケットゲット・ダイナソー!? 恐竜ゲットだぜ! って研究所のみんながやってるやつ!」
「あ……ごめん、それじゃない」

「なあんだ」
 ぼくはがっかりした。前にぼくが欲しいって言ったのを覚えてて、買ってくれたと思ったのに。

「あ、じゃあ化石だ!」
「ごめん、化石でもない……」
 先生の顔がひきつった。ぼくはまたムッとしてしまった。

「ご、ごめん。ほんとごめん」
 先生が慌てて謝るから、
「で、本当はなに?」
 と聞いた。声が不機嫌になっちゃうのは仕方がないと思う。

 先生は背筋をピンと伸ばして、仕切り直しとばかりに、口元に手を当てて、ごほん、とわざとらしい咳をした。

「じゃじゃーん! 恐竜動物園の特別入園チケットでーす!」
 先生が白衣のポケットから取り出したのは、ひとりぶんの入場券。
 ぼくは目を輝かせた。

「それって、ぼくが行きたいって言ってたオーストラリアの!?」
「え!? あ、ごめん、違う、日本の」
 先生が慌てて謝り、ぼくはがっかりした。

 オーストラリアの恐竜動物園は世界最大の恐竜のAI恐竜も化石も展示されててすごいから、行きたいって言ったのに。ぼくのお願い、なーんにも聞いてくれないんだ。ぼくは先生の言うことちゃんと聞いてるのに。

「オーストラリアは遠いから行けないよ。お金がすっごくかかるの」
「ふうん……」
 ぼくはむっとしてそれだけを返事した。ぼくが傷付いたの、先生、わかってる?
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