組長様は孤独なお姫様を寵愛したい。
若菜は両親が壊れたあとも、本当に上手く交わしていた。


全ての矛先が私にむくように。

だからだろう、今回 "ある" ヤクザに私だけが両親に売られたのも。



とことん私は利用されただけだったんだなぁ。

…とおぼつかない足取りでまたいつもの真っ暗でお酒臭い家の玄関の前で鍵を開けようとしていたとき

「あ、お姉ちゃん!」



後ろから私の心境とは真反対の明るくて太陽みたいな声が聞こえてきた。




「………若菜、」



綺麗な茶色のサラサラの髪の毛に、真っ白な陶器みたいな肌に大きな瞳、さくらんぼ色の唇。


誰がどう見てもこの子はいつでもお姫様だ。



「お姉ちゃん、浮かない顔だね?」



だけど私にとってのこの子は誰よりも恐ろしい

悪魔みたいな子だ。



浮かない顔だね…?

全部分かってるくせに。理由も全て。



「…そう?いつも通りだと思うけど…。」




そう、私はこれと言っていつも通りだ。

別に悲しんだところで売られる事実が変わるわけでも無いんだから。
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