組長様は孤独なお姫様を寵愛したい。
私の発言に、ピクっと眉毛を動かす若菜。


ずっと一緒に居て、彼女を見てきたんだから分かる。

これは彼女の癇に障った合図みたいなものだ。




「あはは、こんな辛気臭い顔を見るのも今日で最後か〜!だってお姉ちゃん…」



" 売られたんだもんね? "



心の底から楽しそうに笑うこの子のどこがお姫様なんだろうか。


よく隠しているなと、呑気に心の中で思う。



「そうだよ、若菜今までありがとうね。」



ここで怒っても意味は無いし、別に怒りたいとも思わないから端的にそんな事を言う。


…感謝をしている訳でもないんだけどね。



私はそれだけ言うと鍵を開けて家の中へと入った。



「おかえり〜!!!」


すると人生で言われた事がないような言葉が聞こえてきた。


「…え?」



思わず心臓がドクりとした。

今、おかえりって…言ったの?私に?



目の前の両親は今まで見たことないほど幸せそうな、嬉しそうな笑みを向けている。


若菜ではなく、私に。



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