アルト、雨を体験する【アルトレコード】
「アルト、雨だよー」
「あめ……なんかちがう……」
 アルトが困ったようにつぶやく。

 う……子ども騙しにすらならなかった。
 ヘッドがシャワー状だから、少しでも雨に近いかと思ったんだけど。

 仕方ない、と私は思う。
 しょせんはジョウロなのだ。それに、彼は「触りたい」と言っていたのだ。これだと見せただけだ。

 私は天気予報を確認した。
 明日はいい天気だが、雷雨の可能性がある、とそこには描かれていた。

 私は研究所員に支給されているブレスレット型端末に、雷雨が来たらお知らせが鳴るようにセットした。
 明日こそは先生らしくしたい!



 翌日。
 仕事をしていると、ぴこん、とブレスレット型の端末が鳴った。
 お知らせが来た。雨が降り出したようだ。

 私はアルトの外出用端末を手にとった。
「アルト、外に行こうか」
「そと……どうして」

「雨が降ってるから」
「あめ……わかった」
 たどたどしく答えるアルトを外出用端末に入れた。

 先生らしく教えられるかな、と緊張と期待に胸を膨らませていると、研究室に北斗さんが入って来た。

「どう、教育は順調?」
「はい。これから雨を教えに行こうと思ってるんです」

「外に出るの?」
 北斗さんが驚きの声を上げる。
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