その抱擁は、まだ知らない愛のかたち

エピローグ

小春日和の吉日。
澄んだ青空のもと、貴之と麻里子の神前式が厳かに執り行われた。

白無垢に綿帽子。
花嫁姿の麻里子が現れた瞬間、貴之は思わず息をのんだ。
「……麻里子、綺麗だよ」
抑えきれぬ笑みが、その口元に浮かぶ。

入籍はすでに済ませていたが、
「どうしても花嫁姿が見たいんだ」と言い張ったのは、他ならぬ貴之だった。
根負けした麻里子が静かに選んだのは、明治神宮。

境内に姿を見せたふたりに、招待客から歓声があがる。
晴れやかで、どこか夢のような光景だった。

式を終え、控えの間に戻った麻里子は、
そっと貴之を見上げた。
「貴之さん、ありがとう。……私、とっても幸せよ」
頬をつたう涙は、温かくて優しい。

貴之は無言でその涙に指を添え、ゆっくりと拭った。
「……俺も幸せだよ。麻里子、ありがとう。愛してる」
言葉よりも深い想いが、そのまなざしに宿っていた。

そして、何も言わず、そっと彼女を抱きしめた。

言葉よりも、ぬくもりで伝えた想い。
過去も、痛みも、これからの日々も。
すべてを包み込むように、深く、静かに。

麻里子はその腕の中で目を閉じた。
あたたかくて、やさしくて、これ以上ないほど安心できる場所。

この瞬間を、きっと一生、忘れない。

ふたりの人生は、これからも続いていく。
抱きしめた温もりの中で、確かに始まった、ふたりの未来へ。
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