その抱擁は、まだ知らない愛のかたち
土曜日の夜、貴之の苦悩
土曜日の深夜、貴之はひとり寝室で頭を抱えていた。
……俺は、限界かもしれない。
あのあと、麻里子と近所の居酒屋で他愛ない夕食をとり、彼女を家まで送り届けた。
そこまではよかった。実に、よかった。問題は…そのあと、だ。
寝室のベッドに視線を投げ、深いため息をつく。
「……ふうぅぅ……っ」
脳裏をよぎるのは、上気した麻里子の頬、潤んだ瞳、あの震える声、そして…
なにより、あの悩殺ランジェリー!
あれは反則だろ……どう見ても、夢見る乙女のクローゼットにある品じゃない。
柔らかなレース、華奢なリボン、そして計算されたかのような曲線の彩り。
無意識なんだろうな。いや、そうに決まってる。あれが“狙ってる”んだったら……俺はもう生きて帰れない。
「……くそっ」
思わず天井に悪態をつく。
もちろん、彼女に言ったことは嘘じゃない。
“麻里子の気持ちがちゃんと俺に追いつくまでは、手を出さない”
“酔った麻里子に無理はしない”
“初めては大事にしたい”
全部、本心だ。心からそう思っている。……だがしかし!
「問題はな……体が、ついてこないんだよ!!」
叫びたい。心の中で全力で叫びたい。
なまめかしい反応を見せたあのときの麻里子—あれはもう、“俺を求めてる”としか思えなかった。
しかも、だ。
あいつだよ、あいつ!最近麻里子が読んでる、あの溺愛ラブ小説のヒーロー!
「……丹念に、時間をかけて……? 4、5回も愛撫だけって……はぁ?」
記憶をたどると、しっかり回数まで把握してる自分が怖い。
あのヒーロー、悠然と“焦らし”という技を使いこなしている。
それをなぞるように「真似」している俺。
「……あと三回……。あと三回は、抱いてはいけないのか……」
涙が出そうだ。
それでも決めたのだ。
麻里子の恋に、ちゃんと付き合うと。彼女が夢見る“理想の恋”を、現実にしてやると。
でもな。
「……ほんとに、俺、おかしくなるかもしれん……!!」
寝返りを打つたびに、彼女の香りがまだ残るシーツが誘惑してくる。
「しかも毎日、あんな下着つけてるのか……あれは凶器だ……」
麻里子は、おそらく自分がどれほど俺を翻弄してるかなんて、まるで気づいていない。
いや、それもまた彼女の罪深い魅力だ。
「……俺を試してるとしか思えない……!」
深夜の静寂のなか、枕を抱きしめた男は、
まだ見ぬ“その日”のために、今日も一人、理性の火を絶やさずに燃やし続けていた。
……俺は、限界かもしれない。
あのあと、麻里子と近所の居酒屋で他愛ない夕食をとり、彼女を家まで送り届けた。
そこまではよかった。実に、よかった。問題は…そのあと、だ。
寝室のベッドに視線を投げ、深いため息をつく。
「……ふうぅぅ……っ」
脳裏をよぎるのは、上気した麻里子の頬、潤んだ瞳、あの震える声、そして…
なにより、あの悩殺ランジェリー!
あれは反則だろ……どう見ても、夢見る乙女のクローゼットにある品じゃない。
柔らかなレース、華奢なリボン、そして計算されたかのような曲線の彩り。
無意識なんだろうな。いや、そうに決まってる。あれが“狙ってる”んだったら……俺はもう生きて帰れない。
「……くそっ」
思わず天井に悪態をつく。
もちろん、彼女に言ったことは嘘じゃない。
“麻里子の気持ちがちゃんと俺に追いつくまでは、手を出さない”
“酔った麻里子に無理はしない”
“初めては大事にしたい”
全部、本心だ。心からそう思っている。……だがしかし!
「問題はな……体が、ついてこないんだよ!!」
叫びたい。心の中で全力で叫びたい。
なまめかしい反応を見せたあのときの麻里子—あれはもう、“俺を求めてる”としか思えなかった。
しかも、だ。
あいつだよ、あいつ!最近麻里子が読んでる、あの溺愛ラブ小説のヒーロー!
「……丹念に、時間をかけて……? 4、5回も愛撫だけって……はぁ?」
記憶をたどると、しっかり回数まで把握してる自分が怖い。
あのヒーロー、悠然と“焦らし”という技を使いこなしている。
それをなぞるように「真似」している俺。
「……あと三回……。あと三回は、抱いてはいけないのか……」
涙が出そうだ。
それでも決めたのだ。
麻里子の恋に、ちゃんと付き合うと。彼女が夢見る“理想の恋”を、現実にしてやると。
でもな。
「……ほんとに、俺、おかしくなるかもしれん……!!」
寝返りを打つたびに、彼女の香りがまだ残るシーツが誘惑してくる。
「しかも毎日、あんな下着つけてるのか……あれは凶器だ……」
麻里子は、おそらく自分がどれほど俺を翻弄してるかなんて、まるで気づいていない。
いや、それもまた彼女の罪深い魅力だ。
「……俺を試してるとしか思えない……!」
深夜の静寂のなか、枕を抱きしめた男は、
まだ見ぬ“その日”のために、今日も一人、理性の火を絶やさずに燃やし続けていた。