その抱擁は、まだ知らない愛のかたち
これ、私っぽいと思う?」
「うん。やわらかくて、品があって……麻里子らしい」
夫婦茶碗と揃いの箸を選んだあと、ふたりはスーパーへ足を運んだ。
鮮魚売り場の前で、麻里子が何気なく尋ねる。
「ねえ、貴之さんって、煮物は甘め派? あと、好きな副菜とかあったら教えて」
「……そういうの、覚えるつもり?」
「うん。知っておきたいの」
その一言に、貴之はふと立ち止まる。
「……やっぱり、麻里子ってすごいな」
「え? なにが?」
「なんでもない。ただ、ちょっと感動してる」
微笑みを交わしながら、今夜のメイン—お刺身をカゴに入れた。
その横顔は、どんなご馳走よりもあたたかく、心に残った。
夜風が心地よい窓辺のダイニング。
夫婦茶碗に盛られたごはんと、きれいに並べられたお刺身。
冷えた日本酒をグラスに注ぎながら、ふたりは静かに晩酌を楽しんでいた。
「麻里子、休暇中に他の予定はある?」
貴之が箸を置いて尋ねると、麻里子は少し考えてから首を傾げた。
「とくには……ないかな。のんびりしたくて、予定あえて入れてないの」
「じゃあ、どこか行こうか。温泉とか」
「温泉? いいなあ……どこへ?」
「伊香保温泉なんてどうだ?」
「ほんと? 行ってみたかったの。坂道と石段が風情あるって聞いた」
「それなら車でちょうどいい距離だな。食べ物も美味いぞ」
「わあ、楽しみ……お蕎麦とか、湯葉とか」
「後でホテル決めよう。二泊三日くらいで、ゆっくりな」
「いいわね、それ。ぜいたくな夏休みになりそう」
麻里子がグラスを掲げ、貴之もそれに静かに応じた。
カチンと響いた乾杯の音が、二人だけの夜をさらに満たしていく。
「うん。やわらかくて、品があって……麻里子らしい」
夫婦茶碗と揃いの箸を選んだあと、ふたりはスーパーへ足を運んだ。
鮮魚売り場の前で、麻里子が何気なく尋ねる。
「ねえ、貴之さんって、煮物は甘め派? あと、好きな副菜とかあったら教えて」
「……そういうの、覚えるつもり?」
「うん。知っておきたいの」
その一言に、貴之はふと立ち止まる。
「……やっぱり、麻里子ってすごいな」
「え? なにが?」
「なんでもない。ただ、ちょっと感動してる」
微笑みを交わしながら、今夜のメイン—お刺身をカゴに入れた。
その横顔は、どんなご馳走よりもあたたかく、心に残った。
夜風が心地よい窓辺のダイニング。
夫婦茶碗に盛られたごはんと、きれいに並べられたお刺身。
冷えた日本酒をグラスに注ぎながら、ふたりは静かに晩酌を楽しんでいた。
「麻里子、休暇中に他の予定はある?」
貴之が箸を置いて尋ねると、麻里子は少し考えてから首を傾げた。
「とくには……ないかな。のんびりしたくて、予定あえて入れてないの」
「じゃあ、どこか行こうか。温泉とか」
「温泉? いいなあ……どこへ?」
「伊香保温泉なんてどうだ?」
「ほんと? 行ってみたかったの。坂道と石段が風情あるって聞いた」
「それなら車でちょうどいい距離だな。食べ物も美味いぞ」
「わあ、楽しみ……お蕎麦とか、湯葉とか」
「後でホテル決めよう。二泊三日くらいで、ゆっくりな」
「いいわね、それ。ぜいたくな夏休みになりそう」
麻里子がグラスを掲げ、貴之もそれに静かに応じた。
カチンと響いた乾杯の音が、二人だけの夜をさらに満たしていく。