さよなら、痛みの恋 ― そして君と朝を迎える
どこかで、はっきりと線が引かれた。これ以上、自分を殺して生きるのはやめよう。
その夜、紗夜はスマホに震える指でメッセージを打った。
《助けて、悠真》
五分後。
「紗夜、今から迎えに行く。鍵、開けられる?」
《うん。大丈夫》
ドアの前で、直哉は叫んでいた。
「誰に連絡した!? どこに行くつもりだ!」
紗夜は震えながら鍵を握りしめた。
ガチャ――
「紗夜!」
飛び込んできた悠真の姿に、紗夜は堪えきれず泣き出した。彼の胸に顔を埋め、静かに嗚咽する。
「ごめん、遅くなった。でも、もう大丈夫。俺がいるから」
悠真は彼女を庇うように抱きしめ、直哉を睨みつけた。
「これ以上、手を出したら通報する。いや、もう通報してる。逃げ道はないからな」
直哉は何かを叫んでいたが、もう紗夜の耳には入らなかった。
彼の腕の中にいる。あたたかくて、安心できる場所――ああ、こんな風に誰かに守られることを、私はずっと、望んでたんだ。