さよなら、痛みの恋 ― そして君と朝を迎える



 どこかで、はっきりと線が引かれた。これ以上、自分を殺して生きるのはやめよう。

 その夜、紗夜はスマホに震える指でメッセージを打った。


《助けて、悠真》


 五分後。


「紗夜、今から迎えに行く。鍵、開けられる?」

《うん。大丈夫》

 ドアの前で、直哉は叫んでいた。

「誰に連絡した!? どこに行くつもりだ!」

 紗夜は震えながら鍵を握りしめた。

 ガチャ――

「紗夜!」

 飛び込んできた悠真の姿に、紗夜は堪えきれず泣き出した。彼の胸に顔を埋め、静かに嗚咽する。

「ごめん、遅くなった。でも、もう大丈夫。俺がいるから」

 悠真は彼女を庇うように抱きしめ、直哉を睨みつけた。


「これ以上、手を出したら通報する。いや、もう通報してる。逃げ道はないからな」


 直哉は何かを叫んでいたが、もう紗夜の耳には入らなかった。

 彼の腕の中にいる。あたたかくて、安心できる場所――ああ、こんな風に誰かに守られることを、私はずっと、望んでたんだ。



< 4 / 24 >

この作品をシェア

pagetop