さよなら、痛みの恋 ― そして君と朝を迎える
第三章 きみに恋してはいけない理由
それから数日間、紗夜は悠真の部屋で過ごしていた。警察への届け出、弁護士との連絡、住民票の移動――人生のリセットのような出来事が、次々にやってきた。
それでも、心は不思議と穏やかだった。
キッチンで料理する悠真の背中を眺めたり、同じソファに座ってテレビを見たり。
中学生のころ、家族ぐるみで過ごしていたあの頃と同じ空気が流れていた。
でも、同じではなかった。
(悠真の隣にいると、こんなに胸が温かくなるんだ……)
彼の笑顔、ぶっきらぼうだけど優しい言葉、さりげない気遣い。
「……っ……」
それに気づいた瞬間、紗夜は自分の心の変化に気づいてしまった。
(だめだよ、紗夜……いまは誰かを好きになっちゃ、いけない)