探偵男子たちが強すぎる
◆名無しの依頼◇
「……隙あり!」
「甘い」
今日から通う学園のパンフレットに目を通している最中、わたしがリクエストしたお母さんの手作りミニハンバーグに手を伸ばしたお父さん。
しかし、大皿に乗る最後の一つをわたしは勝ち取った。
「んー!美味しっ」
「負けた……」
わたしの頬張る姿を見て、お父さんは悔しそうにうなだれる。
毎朝、というわけではないけれど……おかずの取り合いっこをすることは割とあって、勝率はわたしの方がいい。
「ふふ、またやってるの?嬉しいけど、早く食べて仕事と学校行っておいでね」
「はーい。んじゃお父さんお先。お母さん行ってきまーす」
「蓮佳待った!」
カバンを持ち、小走りにリビングを出ようとした途端、お父さんに止められてしまった。
「どうかした?」
「これを見つけたら連絡だけでもいいからして欲しいんだ。近所のおばあちゃんに頼まれたら断れなくて……」
そう手渡されたのは、おばあちゃんと犬の写真。
「ああ、このワンちゃんね。了解。それじゃ今度こそ行ってくる」
「……気をつけてね。何かあれば連絡して」
「うん、行ってきます」
「ああ、気をつけるんだぞ」
玄関まで走りながら、黒髪をポニーテールにし、はーい!と大きな返事をしてわたしは家を出た。