新米研究所員 星宮かおるの日記【アルトレコード】
○月28日
 ちょっと落ち着いてきたので、先日の事件のことを書こうと思う。
 この前、20日。ミニミニ義体のアルトと散歩していたときだった。

 このとき、騎士の服を着たアルトは私の肩に乗っていて、いつもより高い視点にご満悦だった。手には青いビー玉を持っていて、本人は魔法の宝玉のつもりらしい。「封印されし力がこめられた水の宝玉が……」とかごにょごにょ言っているのが聞こえたから、笑いをこらえるのが大変だった。

 研究所の玄関のあるメインエントランスはだだっぴろくて天井が吹き抜けで解放感がある。私はこのエントランスが好きだ。ガラスでできた飾りが天井から下がっていて高級感があって、毎時零分にはホログラムのオーロラが投影されて美しい。

 五時近く、訪問者は途絶えている時間だ。五時になったら見えるオーロラをアルトに見せたくて、だからそこも散歩ルートに入れたんだけど、失敗だった。

 警報が鳴って、私とアルトは顔を見合わせた。
『第三開発室で調整中だった猛獣AIが暴走し、義体ごと逃げ出しました。各員、ただちに安全な場所に避難してください。なお警備員は……』
 放送された内容に、この前の開発者の言葉を思い出した。たぶん、あれのことじゃないのかな。

 確か虎型で、リアルさを追求するために獰猛にしたいって言っていたような。「食い殺す直前くらいまでは設定してやろうかな」って。プログラムに失敗していたなら本当に襲うことがあるかもしれない。

 アルトに「避難するよ」って言って歩き始めたときだった。
 悲鳴が聞こえて、私はとっさにそちらを見た。

 女の人三人が走って来て、その後ろになにかいる!
 私は驚いた。だって
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