新米研究所員 星宮かおるの日記【アルトレコード】
△月1日
北斗さんが来たあと。
私は研究室に移動して話を聞いた。
北斗さんによると、警報が鳴ったあと、すぐにアルトの場所を確認したらしい。
で、アルトと連絡をとって、ドラゴンを倒した直後に義体から引き上げたんだって。
「アルト、いったいなにをしたの?」
「一寸法師だよ」
アルトは得意げに言った。
「中に入って、お腹のなかから剣で攻撃してやったんだ!」
「そんなことで止まるの?」
「回路に当たる部分を俺が教えて、アルトがそこを刺したんだ。でもそのおかげでアルトも危なかった」
北斗さんの言葉に、私は顔をしかめる。
「危なかったって……」
「回路を刺したときに通電してしまってね。アルトの義体が感電して、まだ確認はしてないが、おそらくは壊れた。直前で義体から引き上げていたからアルトは大丈夫だけどね」
「アルト、なんでそんな危ないこと!」
「だって、先生がピンチだったんだよ! 大丈夫、ぼくはドラゴンのお腹の中でもあやとりしたり影絵で遊んだりするくらい余裕だったから! 宝玉も取り返したよ!」
強がりを言うアルトに、私はさらに顔をしかめた。
「ドラゴンだってAIなんだから、人を傷付けることはないはずよ。無茶をしちゃだめ」
私はあのとき自分が感じた恐怖を無視して言った。
「そのはずだけどね……でもアルトの危機感は間違ってないよ。実際に君は危なかったんだから。一応、感電しても間に合う計算だったしね」
北斗さんはちらりとアルトを見てから私を見る。
「ドラゴンの中に入った時点でアルトとは連絡がとれていた。アルトの行動には俺が許可を出したんだ。怒らないであげて」
「……北斗さんがそんな許可をするなんて」
「君が危険だとアルトが興奮しててね。防犯カメラの映像を見て、俺も危険だと判断した。いざとなればアルトをこちらに転送すればいいわけだし。回路の位置はこちらで確認して、アルトに刺す場所を指示した。だから怒るならアルトじゃなくて俺に怒ってね」
優しく言われて、私は口を閉ざす。そんなふうに言われたら、もう怒るに怒れない。
あと、さらっと言ってるけど防犯カメラをハッキングしたっぽい。第三開発室の部外秘のはずの回路の位置を知ってたってことは、そっちもハッキング? 大丈夫なのかな、北斗さんの倫理観。平気で嘘をつくときもあるし、アルトのことになると北斗さんの倫理観がぶっ壊れる気がする。
「殺傷がいくらAIに禁則事項として入力されていても事故は起こる。今は無事を喜ぼうか」
「はい」
確かにあのとき、私は死を覚悟した。アルトが守れたならそれでいいと思ったのだけど、やはり生きていたい。生きて、アルトの成長を見守りたい。
「ありがとう、アルト」
「どういたしまして! 先生を守るナイトになれたかな」
アルトは目をきらきらさせて答えてくれた。
「もちろん! だけどもう危ないことはやめてね」
「ナイトなんだから、危険は隣り合わせなんだよ!」
「アルト!」
「……せんせ、落ち着いて」
北斗さんに言われて、私はハッとした。
無事を喜ぼうと言われたばかりなのに、もう怒ってしまった。
興奮さめやらぬ中、北斗さんの提案でお茶の時間をとって休憩し、その日は『上司による事情聴取』という名のお茶会を済ませるだけで業務を終えた。お茶会の時間、残業をつけてもらっちゃった。
ああ、なんか途中から小説みたいな書き方になっちゃった。まあいっか。日記なんて人に見せるものじゃないし、自由だし。
あれ、私ってもしかして小説の才能もあったりする? やばい!
将来、アルトの存在が公けに認められたら『アルトと私』ってタイトルで小説書いちゃったりして!? 感動巨編間違いなし! 映画化されたりして、世界中で有名になっちゃうかも!? サインください! って囲まれたりして。やば、そうなったら外歩けない。書くのやめよ。
北斗さんが来たあと。
私は研究室に移動して話を聞いた。
北斗さんによると、警報が鳴ったあと、すぐにアルトの場所を確認したらしい。
で、アルトと連絡をとって、ドラゴンを倒した直後に義体から引き上げたんだって。
「アルト、いったいなにをしたの?」
「一寸法師だよ」
アルトは得意げに言った。
「中に入って、お腹のなかから剣で攻撃してやったんだ!」
「そんなことで止まるの?」
「回路に当たる部分を俺が教えて、アルトがそこを刺したんだ。でもそのおかげでアルトも危なかった」
北斗さんの言葉に、私は顔をしかめる。
「危なかったって……」
「回路を刺したときに通電してしまってね。アルトの義体が感電して、まだ確認はしてないが、おそらくは壊れた。直前で義体から引き上げていたからアルトは大丈夫だけどね」
「アルト、なんでそんな危ないこと!」
「だって、先生がピンチだったんだよ! 大丈夫、ぼくはドラゴンのお腹の中でもあやとりしたり影絵で遊んだりするくらい余裕だったから! 宝玉も取り返したよ!」
強がりを言うアルトに、私はさらに顔をしかめた。
「ドラゴンだってAIなんだから、人を傷付けることはないはずよ。無茶をしちゃだめ」
私はあのとき自分が感じた恐怖を無視して言った。
「そのはずだけどね……でもアルトの危機感は間違ってないよ。実際に君は危なかったんだから。一応、感電しても間に合う計算だったしね」
北斗さんはちらりとアルトを見てから私を見る。
「ドラゴンの中に入った時点でアルトとは連絡がとれていた。アルトの行動には俺が許可を出したんだ。怒らないであげて」
「……北斗さんがそんな許可をするなんて」
「君が危険だとアルトが興奮しててね。防犯カメラの映像を見て、俺も危険だと判断した。いざとなればアルトをこちらに転送すればいいわけだし。回路の位置はこちらで確認して、アルトに刺す場所を指示した。だから怒るならアルトじゃなくて俺に怒ってね」
優しく言われて、私は口を閉ざす。そんなふうに言われたら、もう怒るに怒れない。
あと、さらっと言ってるけど防犯カメラをハッキングしたっぽい。第三開発室の部外秘のはずの回路の位置を知ってたってことは、そっちもハッキング? 大丈夫なのかな、北斗さんの倫理観。平気で嘘をつくときもあるし、アルトのことになると北斗さんの倫理観がぶっ壊れる気がする。
「殺傷がいくらAIに禁則事項として入力されていても事故は起こる。今は無事を喜ぼうか」
「はい」
確かにあのとき、私は死を覚悟した。アルトが守れたならそれでいいと思ったのだけど、やはり生きていたい。生きて、アルトの成長を見守りたい。
「ありがとう、アルト」
「どういたしまして! 先生を守るナイトになれたかな」
アルトは目をきらきらさせて答えてくれた。
「もちろん! だけどもう危ないことはやめてね」
「ナイトなんだから、危険は隣り合わせなんだよ!」
「アルト!」
「……せんせ、落ち着いて」
北斗さんに言われて、私はハッとした。
無事を喜ぼうと言われたばかりなのに、もう怒ってしまった。
興奮さめやらぬ中、北斗さんの提案でお茶の時間をとって休憩し、その日は『上司による事情聴取』という名のお茶会を済ませるだけで業務を終えた。お茶会の時間、残業をつけてもらっちゃった。
ああ、なんか途中から小説みたいな書き方になっちゃった。まあいっか。日記なんて人に見せるものじゃないし、自由だし。
あれ、私ってもしかして小説の才能もあったりする? やばい!
将来、アルトの存在が公けに認められたら『アルトと私』ってタイトルで小説書いちゃったりして!? 感動巨編間違いなし! 映画化されたりして、世界中で有名になっちゃうかも!? サインください! って囲まれたりして。やば、そうなったら外歩けない。書くのやめよ。