【改訂版】満月の誘惑
そんなことを考える暇もなく、鉢合わせた時にどうやって逃れるかを巡らせる。
命乞いなんて通用しないし、攻撃は勝負が目に見えている。
静かに立ち去るのが賢明か。
その答えに辿り着くと、細く高くそびえ立つ木々の間から、何かが蠢(うごめ)いているのが見えた。
草むらに体を隠して様子を見ていると、蠢いているのは人間のようで、蹲りながら唸り声をあげている。
あの人も狼人間なのかと観察していると、遠吠えとともに手足から鋭い爪が、口から犬歯が。メキメキという音が鳴り、口からは唾を吐いているのがはっきり分かった。
そして、もう一つ分かったこと。
あの狼人間は、荘司さんだった。確信はないけど、背の高さや髪型の特徴が一致していた。