アルト、美術館に行く【アルトレコード】



 翌日、出勤した直後、画面の中の彼に声をかける。
「アルト」
「なんだ?」

「ちょっと試したいことがあるの。端末に入ってくれないかな」
「いいけど、なにをやるんだ?」

「それを言うとテストにならないの。だからお願い」
 私はどきどきした。これがかえってアルトを傷つけたらどうしよう。

 だけど、アルトの本当にやりたいことをやらせてあげたい。
 そのための一歩になると信じる。

 私は端末に入ったアルトと一緒に車に乗って出発した。

「先生、どこへ行くんだよ」
「いいから」
 私は端末をバッグに入れてアルトの視界を塞ぐ。

「なにも見えねーじゃねーか!」
「だから、それもテストの一貫なの」

「ああ? ほんと、なんのテストなんだよ」
 アルトは不審と不満の声を上げるが、私は「内緒」で押し通した。

 そうして、ようやく到着したのち。
 私は端末をバッグに入れてりアルトの視界を閉ざしたまま、物音も聞こえなくした状態でその建物の中に入る。

「ったく、いったいなんなんだよ」
 アルトの悪態は聞こえないふり。
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